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マウィミウオの世界

間鵜井美魚の生活雑記録

2年保育をチョイスしたのは

f:id:mauymiuo:20170407085240j:plain美魚の作業は一段落ついた。昨日は家族三人で東武動物公園に出向いた。ファミリー優待券を頂いたので、特急赤城に乗り安魚を喜ばせてやったことだ。そのため作業は安魚の寝静まった11時から、深夜1時迄おこなった。今朝は珍しく安魚がまだ起きて来ない。疲れたのであろう。普通の親ならもっと生活リズムを整える必要を感じるだろう。寝る、起きる、食べる、遊びに行かせる、それら全てその日次第である。その日暮らしをはや3年継続させている。安魚を今年、私立幼稚園の年少入園をさせるべきか否か、を去年の夏に漁太郎と話した。
「来年さー、安魚の幼稚園どうする?」
「なんも考えてない。2年行かせりゃいーんじゃない。行かせなくたって構わないくらいだし」
美魚夫婦世代は私立幼稚園の2年保育が主流であった。だが美魚は迷っていた。周りに年中入園を考えている家庭は皆無と言って良かった。敢えて時流に逆らうほど確固とした主義主張などは持ち合わせていない。普通にしてればいい、みんながすることをしてれば問題はない。美魚も流されたような顔をして、安魚を入園させようと考えていた。
「毎朝幼稚園に送ったり出来んの?今の君の生活じゃそんなん無理に決まってんだろ」
「バスだってあるし。ピカチュウとかドラえもんとかアンパンマンとかみんな安魚の好きなのだよ」
「なんの為に子ども乗せ自転車あるんだよ、乗せないよバスなんか!」
毎日時間通りに行動する、美魚の一番苦手なことだ。いざとなれば出来る気はする。自信はないが。
だが結局、美魚は漁太郎の意見に従う事にした。
(幼稚園には3歳から入れよう、そしたら自分の時間が出来るから。)
それが美魚の本音であった。実際には今の自由な生活が壊れるのだ、みんながするように出来ないといけないのだ、そんな簡単な事に気づいてなかった。だから美魚は
「安魚の為に絶対頑張るから!」
とは主張できなかった。友だち、遊戯、先生。それらを楽しむ機会を1年分安魚から取り上げてしまったんだろうか。ろくな子育てをしてないなら、プロの保育に預けた方が安魚には良かったかもしれない。だが、まだ3歳ではないか…ふぐた家たらちゃんだってぶらぶらしている。そもそも美魚は来年には規則正しくなれるんだろうか。美魚は安魚を起こしにアトリエを後にした。

木かる粘土フレーム作り2

漁太郎が休みの日。間鵜井家では、夫の漁太郎が主に家事を担当している。今日も朝6時から彼は、溜まった洗濯物を片付け、朝食の準備をする。美魚は安魚と9時前までぐっすり眠っていた。漁太郎は昼前に買い物がてら安魚を連れてアンジェリーノで外出。漁太郎は2日の休みのうちほぼ2日、安魚を連れ出してくれる。そのうち1日は美魚は作業に没頭する事にしている。安魚はいつものように
「お母さん涙枯れるまで泣いててねー」
と美魚に手を振る。
「お母さん泣いて待ってるよー」
とは言うものの、美魚は漁太郎の運転するアンジェリーノが私道から消えると直ぐに木かる粘土で、ダイソーフレームのリメイクを再開した。f:id:mauymiuo:20170406212117j:plain4時過ぎ、表から安魚作詞作曲の「安魚は~可愛いって~言われるけど~」が遠くから聞こえてきた。次にくるのはピンポン連打である。美魚は作業を中断し、慌ただしくアトリエを後にした。

安魚の予防接種

美魚は7時前からフレームのリメイクを始めた。夫の漁太郎は既に仕事に行って不在。漁太郎の朝は早い。昨日は結局掃除機はかけたものの、他には家事らしいことは一つもやらなかった。安魚の予防接種だけはなんとか済ませた。美魚は彼には何も伝えず、唐突に病院の駐輪場にアンジェリーノを駐輪した。
「実は今日、チックンなんだ」
さっと顔色を変える安魚。
「安魚は病気にならないから!」 
予想通りの展開だ。
「赤ちゃんの頃は平気でチックンしてたのにね」
「赤ちゃんの頃もイヤだった!赤ちゃんだからイヤって言えなかった!」
押し問答のさなか、安魚と同じ年頃の子どもが母親に手を引かれ病院に入るのが目についた。
「ほら!あのこチックン怖くないんだね!」
その子のリラックスした態度に力を得たのか、元気が出た。
「安魚強い!チックン行ける!」
待合室では、先程の子どもが硬い表情で診察を待っていた。中に消えるとすぐに悲痛な泣き声が響く。いよいよ安魚が診察室に招かれた。安魚は少し緊張した面持ちながら、医師の診断を大人しく受ける。そして、銀の盆を手にした看護師がカーテンの奥から姿を現す。大人三人は、これから子どもが泣きわめき、抵抗する姿を予見していた。
「じゃあお母さん、右側をしっかり抑えてください」
美魚は安魚の右腕を強く掴み、看護師の手にした小さな注射器を見つめる。
安魚は大人しかった。泣きもしなければ声一つたてない。大人三人は拍子抜けした。 
「強いねー!」
異口同音に安魚を褒めそやす。
「うん、安魚強いから」
ほんとだよな。美魚は少し物足りない気がした。ちょっと泣いたらいいのに。泣かないことは偉い。他人に迷惑をかけないから。でもここは泣きわめき大暴れする方が子どもらしくて好ましい気もするのであった。それをなだめすかす自分に母親らしさを感じるせいなのか。まあ、またすぐに二回目を打つのだか。
「お母さーん!」
階下から安魚の叫ぶ声がした。美魚は(もう起きたのか)と、嘆息したのだった。

木かる粘土フレーム作り

f:id:mauymiuo:20170403143504j:plain美魚はダイソーの200円フレームのリメイクを朝7時から始めた。階下から安魚が起きた気配がする。ガラス戸を開け、それを意外と静かに閉める音。次いでドタドタと階段を四つ足で登ってくる音。もうこれ以上作業はできない。今日こそ掃除機をかけたい、それに安魚の予防接種も行きたい。午後は天気が崩れると云うし、まだ神棚にお参りしていなかった。早く作業を止めなくては…
「お母さーんもう一回寝るのぉー」
安魚が叫びながらアトリエに駆け込んでくる。美魚は木かる粘土にまみれた指で摘まんだタバコを、慌てて揉み消したのであった。