マウィミウオの世界

間鵜井美魚の生活雑記録

モラトリアム続行中

f:id:mauymiuo:20170424072834j:plain新宿世界堂に行く。誕生日を迎えた美魚は、漁太郎にねだる物を考えていた。一番欲しかったのはティファニー。だがそれを言い出す事ができない。特にティファニーなど、大ブランドの価値を疑うことをモットーとしている漁太郎には絶対受け入れ難い代物である。美魚はメディウム数点とカラーインクセットを漁太郎に買ってもらった。世界堂を出て、伊勢丹が目に入るが、二丁目方面に足を向ける。ぶらぶら散歩しつつ、なんとなく曙橋まで歩く。そーだ、久しぶりにセツに行ってみたいな、と美魚は思う。だが、まったく思い出せないのだ。曙橋駅から出て、直ぐだったことは覚えている。フレッシュネスバーガーがチラッと目に入った時、美魚は十数年ぶりに記憶が蘇った。外観は経年を感じるものの、美魚が学んでいた頃とほぼ変わらないままであった。ちょうど卒業制作数点が展示されていた。懐かしのセツタッチ、かの伝統は受け継がれていた。美魚はこの絵が描けなかった。流れる瀟しゃなライン。ファッション画。憧れのA。美魚がしばしば指摘された「これは制作だね」の言葉は、今も頭に残る。確かに美魚はアートではない。制作である。アートとは伝統のラインを習得し伝承することなんだろうか。美魚は反発を覚えつつも、セツの雰囲気だけは愛していたことだ。美魚は年をとり、子供がいて、その子供をセツの前に立たせたりする。美魚はティファニーが欲しいと思ったりする。そしてそれを今自分で買う事ができない。会社員の頃なら簡単に買えたが、今は無理である。美魚は重たい世界堂の袋を指に食い込ませ、セツを懐かしそうに眺める自分に何となく嫌気がさして、石段を登った。