マウィミウオの世界

美魚の生活雑記録

間鵜井邸

美魚は引っ越しをしたいと思っている。今の家は昭和の建て売りの中古である。築38年。床の間にボコボコした柱があったり、家の窓ガラスが全部すりガラスだったり、トイレが和式だったりしてとてもレトロで気に入ってはいる。
だが、ボロボロなので困る。まずは床に傾斜がある。これは購入当時に分かっていた。最近畳の床下がブカブカする。安魚がネコツリーから飛び降り遊びをするたびヒヤヒヤする。安魚ではなく、床が、である。そのうち踏み抜かれてしまいそうで恐い。1階居間の押し入れの床が抜けた時の衝撃は忘れられない。押し入れには漁太郎の行き場の無い漫画が300冊程ぎっしり積み込まれていることだが、あれは安魚がまだ赤ちゃんだった3年前のこと。美魚は押し入れの襖にもたれ掛かって安魚をだっこしていた。すると、
「ギ・ギ・ギ・ギ」
何処からともなくうめき声のようなものが聴こえてくる。
「ギ・ギギギギギーッ」
地を這うような不気味な音響は次第に大きくなる。何だ?
「ギギギギギー」
心霊現象か?!美魚が安魚を抱いてその場に立ち上がったその刹那、
バスーンッ!!」
突然襖が弾け飛んだ。(ように見えたが実際は外れただけ)
過積載ゆえか、ボロボロのせいか、床が抜けた瞬間であった。床は漁太郎がすぐさまホームセンターに向かい、夜までに形を着けた。その時美魚は、床板の下が土であることを改めて知った。1枚したの世界に蠢くやつらを想像して、ゾッとしたことだ。家が強固で無くてはならない理由、やつらの侵入を許さないためである。やつらと同じレベルで生活したくないからだ。
ボロボロに目をつけられて、
「このままにしていたら、大変なことになる」
などリフォームの営業を受けることがたまにある。
美魚は既に何度も訪問を受けているので断り文句は決まっている。
「家は住めるだけ住んだら更地にするんです」
「あとどのくらいですか?」
「そーねーあと10年くらいかなー」
なーんて言ってお断りしてからはや10年経ってしまったことに気づいた。
安魚が先日唐突に
「もうこんなボロボロの家に住みたくないよ」
と言い出した。美魚の話す言葉の模倣である。つい
「あーもーやだなこんなボロボロ」
と愚痴を言ってしまうのが良くないのだろう。おうむ返しに子供に言われてもショックが大きい。
この家をリフォームするのもありだとは思う。だが、そもそもこの家は通勤圏内と云うだけでチョイスした950万の家。会社も辞めたし、ここにいる理由は既に無い。自己資金が500万あったのだが、銀行の住宅ローンが全額借り入れになったのは今考えてもよくわからない。そのローンがあと5年残っている。あーあ、引っ越ししたいな。出来たらまた昭和な家がいいな。f:id:mauymiuo:20170620105550j:plain