マウィミウオの世界

間鵜井美魚の生活雑記録

母、家出する

田舎の母に、安魚のランドセルをねだろうと、一年ぶりくらいにラインをした。
しばらくして返信があった。

「お母さんは元気です。お父さんは癌が見つかりました。お母さんは今、家出して4日目です」

母はいつも殴られていたが、66歳にして、遂に反撃に出たという。物をぶつけたりして。
そして、父の車に乗り込むと、そのまま警察に駆け込み、保護してもらったらしい。
そもそもの原因は、母の車が壊れたことらしいが、くだらないから、割愛する。
警察は後からパトカーで自宅に赴き、父を連行した。話聞きたいから、とか言って。
その隙にまた母は家に戻り、金目の物や着替えなど持ち出してきたんだそーだ。
車はないわ、通帳印鑑現金はないわ、父はいい気味である。遅すぎたくらいだ。
刑事は
「逮捕しますか?」
と、母に尋ねたそうだが、拘留は2日のみ。
後から殺されるかもしれないので止めてもらい、
接近を禁止し、破れば即、逮捕。で終わり。
母は放浪の旅に出ることにしたのだそーだ。

もし美魚が安魚のランドセルをねだろうとしなければ、こんな騒ぎは知らなかったと思う。

芸術家気取りの兄は、もう東京に住んでいないらしい。2年くらい前に田舎に戻っていたらしい。
知らなかった。
たった2ヶ月で仕事辞めたのね。で、田舎に帰っちゃうのねー。

家出した母は最初、近くにいる兄に連絡したそうだ。
母がいれば、当然父がやってくるだろう。
いかに警告されていようが、父は追うだろう。
兄の瞑想的な日々はぶち壊しである。
故に、兄は、すごーく嫌な顔をした。
そして、一言
「俺、今から夜勤なんだよ…」
それきりである。
未だに家賃が払えないとか言って、母にせびるくせして、(46才)
学生時代からの仕送りが貰えなくなって仕方なく実家に戻ったくせに、(38才)
「ここにこのままいるビジョンがない」とか言ってまた東京に引っ越すときは(44才)
身分証明書が無くて大騒ぎしたくせに、さんざん脛を齧りこの先も齧る気満々で親の近くにアパート借りて住んでるくせに、
自分に迷惑がかかりそうな時は突き放す。
さすが芸術家気取り!エッセイスト!思想家!
美魚はどうしたって、
「じゃ、うち来ればいーじゃん」
とか、当然言ってしまうもの。
母はあんまり好きじゃないけど、放浪じゃ気の毒だなー
って、同情しちゃうもんなー。

父はごく初期の癌を既に摘出して、今すぐ死ぬような感じではないらしい。
だが、なんとなく、美魚は父はあと少しで死ぬ気がする。
父はちゃんと自分で末期癌を呼び込める人だ。
不安を増幅させる天才だから、毎日クヨクヨ体の心配をして、母を恨んだりして、体を壊して、
あと2年くらいで…
いや、逆に執念で元気になるかも。

父はおかしい。
この騒ぎの翌日には警察にノコノコ赴き、
車の盗難届を出そうとして却下されたそうだ。
さらに、母の捜索願も出そうとして、やはり却下されたそうだ。

大丈夫じゃないな。