マウィミウオの世界

美魚の生活雑記録

安魚のパカ

2月11日。間烏井一家は新青森駅に到着。去年の11月には一握りの雪が溶け残っていただけだったが、今日はムード満点の一面雪景色。明後日の酸ヶ湯温泉も期待できそうである。また、美術館でゆっくりシャガールを堪能するのも毎回楽しみである。

安魚はいつも旅行にはパカというアルパカのぬいぐるみを連れていく。二歳からそれは変わらない。パカの頸を握りしめて歩く。しかし、パカは青森で幾度となく行方不明になっている。落としたこと2回、ホテルに置き忘れシーツに巻き込まれ持っていかれたこと1回、そして今回は巡回バスに置き忘れられてしまった。
山のように一家の荷物を背負っている漁太郎は、安魚に気を付けるのは美魚の仕事である、と叱責する。確かにその通りで、パカを毎回遺失するのも、美魚が小さいやつが傍らに居ることを忘れて自分の思いにどっぷり浸かってしまうせいだと分かっている。

グレコの前で例のごとく安魚が
「パカがいない」
と青ざめた時、漁太郎は冷た~い目をして美魚を見る。
確かにバスには乗っていた、と安魚は言う。それすら美魚は定かではないが、漁太郎はパカを探しに美術館を後にしたことだ。

パカはいつも戻ってくるのである。
道端に落とそうが、施設に忘れようが、シーツに巻き込まれようが、ちゃんと取り戻せる。全て漁太郎の奔走によるのであるが、この世の終わりのように深刻になる安魚は意外と記憶力がよく、どの地点までパカがいたのかを明確に覚えている。ふっ、と握りしめた手を弛めてしまうのは幼児なので仕方がない。

美魚たちが館内を巡り終わった頃、フトコロに何気なくパカの顔を覗かせた漁太郎がすれ違う。
よかったねー、薄汚いパカよ。
野良パカにならなくて済んだねぇ。

美術館のショップで安魚は馬場のぼるの、11匹のねこシリーズに出てくる水玉ねこピンクを買う。
パカとへんなねこを連れて、次は浅虫温泉へ向かう。
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