マウィミウオの世界

美魚の生活雑記録

朝日に光るのは赤い液体

夜明け前、自転車で川に行くこと。
堤防に登って辺りを見回す。街灯を映す川面の向こうに、夜と朝のオレンジ色の濃淡が入り雑じって美しい。人気もなく、静寂を味わえる時間だ。歩くにはまだ少し暗くて怖い。
美魚のお気に入りの場所は、川に掛かった橋の下である。
今ちょうど堤防が工事で封鎖されているのだが、橋の下だけはガードレールの隙間から入れる。
1人でじっくり夜明けを眺めていられるので二週間程毎日通っている。
昨日も同じようにガードレールの隙間から入り込んで、明るくなるまで過ごそうと思った。
ところが先客がいた。
自転車の横に、黒いダウンを着た男らしき人が、コンクリートに直に寝ていた。
封鎖された堤防に自転車を持ち込んでるのを見て、ホームレスの方だろうか。と考えた。暗いのでよく分からないし、怖いから、見ないようにした。

ああ、美魚だけの世界が崩壊したなとガッカリした。
そして、そっとその場を離れた。

今朝少し明るくなってから、同じように橋の下へ入って見た。もうそのダウンの人も自転車も無くなっていた。また美魚だけの場所になった。

それにしても、直に寝てる人は初めて見たなぁ。

などと考えながら、昨日ダウンの人が寝ていた場所に立とうとすると、
血が流れたような跡が生々しく残っていた。
ぽたぽたではなく、だらだら流れたような、レバーのような塊もあるような、経血のように薄いような、とろみとさらさらが分離したような、割りと大きな赤黒い水溜まりが、所々に残されていた。
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これは、事件か?事故か?
あのダウンの人は、なんかあったのかな。

キープアウトも何もないし、現場検証の跡もないし、ダウンの人もいないし自転車もないし、そもそも血痕ではなくて、何か赤いものなのかも知れない。
大丈夫、ちょっと変な気がしただけだ…。
その赤いものはやがてギラギラの朝日に浄化されるだろう。


そして朝日を見届けてから、学校へ行く安魚を起こしに帰った。

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