マウィミウオの世界

美魚の生活雑記録

蔵の町

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記憶の彼方に在るような、古い町並み。
美魚は新しい都市より、寂れた町が好きである。
朽ちかけた無人の木造二階建ての家があったりすると、ドキドキする。割れた窓から蔓草が侵入していたりすると最高である。
そこには、嘗て反抗期真っ盛りの若者がいて、YMOのポスターなど、当時の最先端なミュージシャンのポスターがその部屋に貼ってあったかも知れない。
いや、未だに錆びた画鋲で留めてあるのではないか、何て考えるのが好きだ。

喜多方は蔵が多い。みな土壁が崩れかけている印象だが、地震のせいだろうか。
坂内というラーメン屋で昼御飯を食べる。
ボリュームも凄い。美味しい。
でも、ややしょっぱい。

新宮熊野神社

母を留守番させて、美魚は漁太郎と安魚で、会津若松旅行に出掛けた。
北千住から、スペーシアで鬼怒川まで行き、会津の特急に乗り換えて、喜多方まで向かった。
青森が大好きだけど、今青森は激安ツアーがない。
だから、というわけではないが、福島も行ったことがないので、楽しみにしていたことである。

土曜日なので、市内周遊バスが出ていた。
初日の目的地は、新宮熊野神社である。
雨は止んでいたが、拝殿の前でさーっと降り始めたのも印象的だ。
寝殿造の拝殿に、スリッパで上がることができる。
賽銭箱の後ろから参拝者を見るのは、こんな気分なのか。
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銀杏の紅葉シーズンが人気らしいが、梅雨時の鬱蒼とした感じが好きである。
濃緑色の夢のよう。

母、家出する

田舎の母に、安魚のランドセルをねだろうと、一年ぶりくらいにラインをした。
しばらくして返信があった。

「お母さんは元気です。お父さんは癌が見つかりました。お母さんは今、家出して4日目です」

母はいつも殴られていたが、66歳にして、遂に反撃に出たという。物をぶつけたりして。
そして、父の車に乗り込むと、そのまま警察に駆け込み、保護してもらったらしい。
そもそもの原因は、母の車が壊れたことらしいが、くだらないから、割愛する。
警察は後からパトカーで自宅に赴き、父を連行した。話聞きたいから、とか言って。
その隙にまた母は家に戻り、金目の物や着替えなど持ち出してきたんだそーだ。
車はないわ、通帳印鑑現金はないわ、父はいい気味である。遅すぎたくらいだ。
刑事は
「逮捕しますか?」
と、母に尋ねたそうだが、拘留は2日のみ。
後から殺されるかもしれないので止めてもらい、
接近を禁止し、破れば即、逮捕。で終わり。
母は放浪の旅に出ることにしたのだそーだ。

もし美魚が安魚のランドセルをねだろうとしなければ、こんな騒ぎは知らなかったと思う。

芸術家気取りの兄は、もう東京に住んでいないらしい。2年くらい前に田舎に戻っていたらしい。
知らなかった。
たった2ヶ月で仕事辞めたのね。で、田舎に帰っちゃうのねー。

家出した母は最初、近くにいる兄に連絡したそうだ。
母がいれば、当然父がやってくるだろう。
いかに警告されていようが、父は追うだろう。
兄の瞑想的な日々はぶち壊しである。
故に、兄は、すごーく嫌な顔をした。
そして、一言
「俺、今から夜勤なんだよ…」
それきりである。
未だに家賃が払えないとか言って、母にせびるくせして、(46才)
学生時代からの仕送りが貰えなくなって仕方なく実家に戻ったくせに、(38才)
「ここにこのままいるビジョンがない」とか言ってまた東京に引っ越すときは(44才)
身分証明書が無くて大騒ぎしたくせに、さんざん脛を齧りこの先も齧る気満々で親の近くにアパート借りて住んでるくせに、
自分に迷惑がかかりそうな時は突き放す。
さすが芸術家気取り!エッセイスト!思想家!
美魚はどうしたって、
「じゃ、うち来ればいーじゃん」
とか、当然言ってしまうもの。
母はあんまり好きじゃないけど、放浪じゃ気の毒だなー
って、同情しちゃうもんなー。

父はごく初期の癌を既に摘出して、今すぐ死ぬような感じではないらしい。
だが、なんとなく、美魚は父はあと少しで死ぬ気がする。
父はちゃんと自分で末期癌を呼び込める人だ。
不安を増幅させる天才だから、毎日クヨクヨ体の心配をして、母を恨んだりして、体を壊して、
あと2年くらいで…
いや、逆に執念で元気になるかも。

父はおかしい。
この騒ぎの翌日には警察にノコノコ赴き、
車の盗難届を出そうとして却下されたそうだ。
さらに、母の捜索願も出そうとして、やはり却下されたそうだ。

大丈夫じゃないな。

出張カメラマンを探して

こども園の修了式に、プロカメラマンを入れたらどうか、という案がでた。
式の間、何故か父兄は撮影禁止なのである。
だが、プロカメラマンはオッケーなのだという。
まだ先のことではあるが、どんなものなのか、美魚はGoogleで検索してみた。
出張カメラマンから見積りがくるサイトを手始めに調べた。
予算は三万で、もろもろ経費込み。
100枚くらい撮る、とのこと。
100枚ですかー、スゴいですねー。
と、美魚は考えた。
33人で100を割ると、3枚くらいだ。
今はちゃんと分かる。
だがその時は、1人10枚かー。
と疲れた頭が計算してしまった。
最初のヒットで心が動いていたので、このカメラマンでもいいかー。なんて思っていた矢先。
「ちょっと待ってください!1人100枚じゃないですよ?!大丈夫ですか!」
といきなり冷水を浴びせられた。
美魚の文章も変であった。
「1人3枚くらいが相場だと聞いていたので、100枚はスゴいですね、」
と書いている。
ほんとだよ、私。大丈夫じゃないですよ。
でも、
「ちょっと待ってください!」
「大丈夫ですか!」
という言葉をかけられて、
可笑しくも悲しい気持ちがしたのだった。
メルカリの出品者の対応の方が、まだ我慢強く丁寧だぞ。

もちろん不成立。

あー、どうすればいいかなぁ。
セミプロおじいちゃんとか、誰かの父兄は、知らないのかなあ。
川蝉撮ってたりするじゃん。
ごっついカメラ持ってる人たち。

快適な日々

充電が丸二日かけても50%に満たず、充電器から外すと10分弱しか使用できなかった美魚のポンコツスマホ
携帯できなかったスマホ
依存しようのなかったスマホ
基本的に電源オフだったスマホ
我慢の限界を1年半も堪えて、ついに新しいスマホを買ったですよ。
HUAWEIとか言うやつですよ。
ぶっちゃけ何でも良かったですよ。
電池が公衆電話の10円みたいにあっと言う間に消費されない。
それだけで、なんて、快適なんでしょう。
こども園でのイベントを全てチェキで撮影してたですよ。
運動会の臨場感はゼロでしたよ。
お遊戯会やコンサートも、音がするチェキは使用できなかったですよ。
園で販売していたプロカメラマンの写真プリント購入額が、洒落にならない金額でしたよ。
あー、あー、あー。
なんで、さっさと買い換えなかったのでしょうね。
だって、スマホなくても大して困らないからなんですねー。
朝10分だけ電源オンして、ラインやメールをチェックすれば、大概こと足りるんですねー。
周囲にスマホポンコツであることをお知らせしとけば、返信遅くても怒られないです。
ただ、二回ほどこども園から電話が来ましたねー。
電源オフだから、もし安魚に事故でもあったら大変でしたねー。
まあ、最悪午後2時にお迎えに行くので、なんとかなったでしょうね。

今こうしてブログをしたためながら、電池が全然減らないんですよ。
素晴らしいなっ。

ナウシカ道をゆく安魚

こども園のテラスで、子どもたちが、カメムシを捕まえて遊んでいた。
そのサークルを割って入った安魚は、
「やめなよ!かわいそうでしょ!」
と、カメムシを庇っていた。その癖触れない。美魚も近づき、じゃあ逃がそっかーなんて砂場のコップにカメムシを誘導し、安魚に手渡すと、草むらに走って行って逃がした。
子どもたちが安魚の後を追いかけたあとで、その子たちのママになんとなく気まずい美魚は、
「安魚はナウシカに憧れているので」
その場を誤魔化した。
その話が他の子のママに伝わり、ラインをいただいた。
その子も安魚のように日テレでナウシカを観ていたく感動し、以来オームの絵を描いているのだそうだ。
安魚は絵ではなく、再現をするのが好きである。
テトごっこ
(指を噛んでから、ほら怖くない、でペロペロ)
足ジューンごっこ
(子オームを毒水から庇ってナウシカの足がジューン。心配する子オームに、やさしい子)
ナウシカバーンごっこ
(オームの群れにはね飛ばされたナウシカと子オームからの、やべえこれナウシカじゃん、とオームがしーんとする)
ナウシカが生き返るごっこ
(その者金色の野に降り立つべし。でも服は破れてるよ)

飽きもせず、繰り返している。
安魚はナウシカが傷つき、見返りに愛されるシーンがいたく気に入っている。

カメムシはその後も3日くらいテラスに舞い戻り、遂に命を落とした。

安魚の慈愛は届いているだろうか。

しくしく泣く安魚

f:id:mauymiuo:20181217102159j:plain漁太郎が、安魚に絵本を買ってきて、読み聞かせをしていた。
タイトルは 地獄。
平安絵巻を絵本に編集したようなもので、安魚は漁太郎の横に張り付いて、熱心に見ていた。
随分興味あるんだな、と美魚は思っていたが、終にしくしくと泣き始めた。

怖さを知るのはよいことだろうか。
四歳のピュアなハートに地獄は必要か?
なんてことしやがる!トラウマになったんじゃねえのか?!
と、美魚は腹を立てたことである。
しかし、のんのんばあが幼少期にスピリチュアルな世界を垣間見させたお陰で、私達は水木しげるの妖怪に出会うことができる。
地獄が恐ろしい、と感じるのも四歳だからかもしれない。

もちろん地獄だけでは片手落ちであろう。
次は極楽の絵本を漁太郎は読み聞かせ始めた。
安魚は極楽にはあまり響かない様だった。
実際、
死んだらここに行けますよー
なんて云われてもピンと来ないもんな。
しかし、地獄だけは、時代を越えて幼児を恐怖させるらしい。