マウィミウオの世界

美魚の生活雑記録

成功哲学

f:id:mauymiuo:20170609105825j:plain今朝も安魚の
「お・かあ・さーん!!!」
の絶叫が階下から響く。
以前は無言でドタドタと両手をついて階段を登り、アトリエへ入って来たことだが、
この頃は起きると絶叫して美魚を呼びよせる。
ああ、
とペンを置く。
アトリエといっても3Kのうちの一部屋に過ぎない。ただこの部屋には作業机を置いているので、
美魚はアトリエと呼んでいる。
漁太郎と共有しているスペースだし、油断すると猫が机に寝そべったりする。
昨日も漁太郎は安魚を連れて買い物に出かけた。
その間に美魚は作業の続きを始めた。2時間後。
いいところでピンポンピンポーン、と帰宅を知らせるチャイム。
うかつにも美魚は、絵をそのままに机を離れてしまった。
そして数時間。
安魚も昼寝したことだし、と机に向かったその時である。
「絵の上に直に灰皿置いてあるー!」
無神経にも程がある、と美魚は漁太郎に涙ながらに抗議したことだ。
漁太郎はあー、ごめん。と謝りつつも
「だって灰皿置くとこないから」
「キミが部屋をカオスにしてるから」
「そんなに大事なら管理しないのが悪いんじゃない」
「キミは恵まれていることに気づいてない」
などと逆に色々言われてしまう羽目になる。
恵まれているとはどういうことだろう。
経済ではないのは確かだ。
共稼ぎが多いこの昨今に、
美魚は絵だけ描いてたいから、と会社を辞めた。
収入が減った分貧乏になった。
忘れた頃に安魚が産まれた。
更に経済は不安になったし、
絵を描く精神的な余裕がなくなった。
そして夢うつつのうちに安魚は3歳を迎えた。
やっと描けるようになったのだ。有難いことである。漁太郎は
「俺だって大変なんだよ?安魚とキミの面倒みて」
と話しを締めくくる。
悔しいけど、ほんとの事なので言われても仕方がないのであった。
贅沢しなければ何とか暮らしていける。
何とか暮らせれば絵を描いてのんびりやっていける。
だが、それでいいのだろうか。
絵を描く動機付けは何であったのか。
絵で欲しいものが手に入らなければ、経済や富が産まれなければ、単なる趣味である。
昔のことだが、ヴィヴィアンが着たくて風俗で働いてる子がいた。
美魚は体を張ってまで、買いたいとは思わなかった。
それに美魚は歌舞伎町のスナックを3時間でクビになった。
「あんた偉そうだな」
とお客さんに怒られてしまったので驚いたことだ。どうしてもヴィヴィアンが欲しい!という動機付けが弱かったせいだろう。
絵を描くのが楽しいようではダメだ。
もっと自分を追い込まねば。
自分に殺し屋を依頼したゴルゴ13のように。
図書館で借りた
「思考は現実化するⅠ Ⅱ Ⅲ」
を読みながら思う美魚であった。

そんな美魚は漁太郎に言わせると
「閑人代表」
「フリーダム」
浮世離れして全然苦労してない人間、それが美魚なのだそうだ。

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